〜 MOOC の浸透と利用者意識の洗練化 MOOC に効果・内容を求める兆し 〜
一般社団法人日本オープンオンライン教育推進協議会(所在:東京都文京区、理事長:白井克彦 (早稲田大学名誉顧問) 以下、JMOOC)は、NTTコム オンライン・マーケティング・ソリューション株式会社(本社:東京都品川区、代表取締役社長:塚本 良江、以下NTTコム オンライン)と共同で、「大学のオープン化に関する調査」を実施した。
本調査は、NTTコム オンラインが運営するインターネットアンケートサービス「NTTコム リサーチ」の登録モニターのうち、全年代の方を対象に調査を実施し、有効回答者数は1142名。今回で13回目の調査である。
総括
大学等の高等教育機関などが、インターネットを通じてオンラインで講座を公開する取り組み「MOOC(Massive Open Online Courses)」は、簡単な登録だけで無料で講義を閲覧・学習することができる。テストや課題の修了条件を満たした学習者には、履修の証明として「修了証」が発行される仕組みである。
2012年にアメリカで始まった「MOOC」は、ヨーロッパ圏やアジア圏にも広がりをみせ、世界のMOOC学習者人口は1億1,000万人以上と言われている(2019年12月 Class Central発表)。日本では2014年4月からJMOOCが講座提供をスタートして5年半が経過、JMOOCの受講者は2016年以降毎年倍増するペースで拡大し、約100万人(2019年5月末現在)を超えた。しかし、1億人を超える世界の学習者人口と対比すると、日本の学習者人口は極めて小さいことから、日本国内におけるMOOC認知度の依然として低いと言わざるを得ない。
日本国内のICT化の動向としては、“EdTech”の進展により、いつでもどこでも手軽に学べる環境が整った。学習場所や時間が多様化し、隙間時間の学習とじっくり時間をかける学習スタイルの組み合わせが定着したのみならず、学校の授業や会社での勤務時間中のMOOC利用が増加するなど、MOOC自体が社会や生活に浸透しつつあることが読み取れる結果となった。
対面学習への受講意向は、昨年増加したポジティブ層が10ポイント程度大幅減少し、ネガティブ層が倍増して3割弱となる消極的なスタンスが目立つ内容となった。昨年表出した対面学習への期待が、学習へのモチベーション向上からその効果・内容へと向かっている傾向が顕著になっていると推察できる。
学習手段については、「無料のWEB講座」を求める声が多いものの、本年度は「書籍による自主学習」への支持が回復している。また、近年顕著であった「無料のWEB講座」に代表される無料化を求める流れも優勢ではあるものの、一定の歯止めがかかり、変調の兆しが読み取れる。対面学習と同様に、利用者のMOOCに対する意識やニーズが洗練され、より一層の効果・内容を求める傾向が推察される。
なおMOOCで学習したい分野では、トップ10のラインナップは変わらないものの、「予防医学」がランクアップし、「高齢化社会」「人生100年時代」を踏まえた健康に対する関心の高まりが伺える。
調査の結果のポイント
(1) MOOC学習は、場所や状況に応じて機器を使い分けながら、自宅・出先双方において拡大傾向
一般利用のインターネット端末はスマートフォン利用が過去最高を記録した。パソコンの利用率も高く 、用途に応じて 機器を 使い分け る傾向が 継続 している 。 MOOC 学習におけるインターネット端末利用については、パソコン、スマートフォン、タブレットともに利用率が下がっている。ポータブル機器利用におけるスマートフォン優位という傾向は 継続し ているが、特定の端末に固定せず、機器の機能を生かした使い分け傾向が進んでいると考えられる。学習場所・時間における自宅 の 割合 が 半数に 増加し、 自宅以外で は「 空き時間 」 と「勤務時間・授業時間」 双方の 割合 が 増加 していることから 、場所や状況に即して機器を使い分けながらも、MOOC 自体が学習手段として社会や生活に浸透しつつあることが推察できる 。
(2) MOOC学習での希望分野は、男性1位「経済学&金融」が連覇・女性1位は6年連続「心理学」
学習したい分野の調査結果は、上位から 「心理学」 「歴史」 「 音楽、映画 」 と続き、 教養系 と実務 系科目に万遍なく 分散 しつつも 、 人気がある学習分野 が 固定化 する 傾向 が継続している 。 トップ 10 のラインナップに変更はないものの、「予防医学」が 8 位に順位を上げ、「健康&社会」も 9 位と順位を維持していることから、健康に対する関心の高まりが伺える。 男女別では、 男性1位は 昨年同様 「経済学 金融」 で、 昨年 4 位だった「歴史」が 2 位 と復調して いるものの、 「ビジネス・実務系」分野への人気が高い傾向が 継続している。 女性は例年と変わらず「教養系」「生活密着系」の分野への関心が高い が 、「哲学」などこれまでに見られなかった学問への関心が高まっている ことが特徴的である。
(3) 「対面学習(反転学習)コース」への評価が急減、「修了証」の必要性は高い 対面学習への受講
意向は、ポジティブ層が85%から73%に大幅減少し、ネガティブ層が3割弱と急上昇し(昨年度は15%)する消極的なスタンスが目立つ内容となった。対面学習への期待が、「自らの学習するモチベーションの維持」から「学習において理解を深められること」へと変化する傾向が顕著に出ていると推察できる。またMOOCの履修の証明としての「修了証」については、昨年度の75.7%を上回る78.4%がその必要性を認めている。
(4) 希望する学びの手段は、「WEBでの無料講座」が首位だが、無料化志向に変化の兆し
学び直しの手段について希望を聞くと、昨年同様「WEBでの無料講座」が「書籍による自主学習」を上回っているが、「書籍による自主学習」が対前年比で6.9ポイント上昇し、追い上げる結果となった。
学び直しの費用について「無料」を求める声が8割を維持し、「WEBでの無料講座」の利用意向が最多だが、「WEB講座(無料)」「民間の講座受講(無料)」「放送大学(無料)」など無料の学び直し手段が対前年比で支持を下げており、変化の兆しが読み取れる。
(5) 理工系出身者の「学び直し」経験・意向が上昇、「やる人はやっている」状態に
学び直し経験者にその理由について聞いたところ、昨年同様、自己研鑽型がポイントを伸ばした。
理工系出身者に対する「学び直し」ニーズは、必要性を感じかつ経験があるが対前年比で7.9ポイント上昇して25.5%、必要性を感じていないが54.4%という結果となった。学び直し経験・意向のある社会人は依然として少ないが、学び直し経験者は対前年比で大幅に増加し、「やる人はやっている」状態になりつつあると推察できる。
調査概要
・調査対象: 「NTTコム リサーチ」(*) 登録モニター
・調査方法: 非公開型インターネットアンケート
・調査:大学のオープン化に関する調査
・調査期間: 令和元年9月19日(木)~令和元年10月23日(水) ・有効回答者数:1142名
・回答者の属性:
【年代】 男性10代:2.3%、20代:9.8%、30代:9.6%、40代:9.6%、50代:9.4%、60代以上:9.4%
女性10代:2.0%、20代:9.4%、30代:9.7%、40代:9.7%、50代:9.5%、60代以上:9.5%
【職業】 会社役員/社員:37.6%、公務員・団体職員:5.2%、自営業:6.8%、学生:4.8%
アルバイト・パート:14.8%、専業主婦・主夫:15.9%、無職:13.0%、その他:1.8%
《 補足 》
(*) NTTコム リサーチ(旧gooリサーチ) http://research.nttcoms.com/ NTTコム オンライン・マーケティング・ソリューション株式会社が提供する高品質で付加価値の高いインターネットリサーチ・サービスです。
自社保有パネルとしては国内最大級のモニター基盤(2019年11月現在 217万会員)を保有するとともに、「モニターの品質」「調査票の品質」「アンケートシステムの品質」「回答結果の品質」の4つを柱とした「クオリティポリシー」に基づく徹底した品質確保を行い、信頼性の高い調査結果を提供するインターネットリサーチとして、多くの企業・団体に利用されています。
◎調査データの詳細はこちら 2019年度大学のオープン化調査
<本件に関するお問い合わせ先>
一般社団法人日本オープンオンライン教育推進協議会
担当:JMOOC事務局 岩間
TEL:03-3295-3555
URL:https//www.jmooc.jp
メールアドレス:secretary@jmooc.jp